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親から子へ語り継ぎたい 日本の神話 その4

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      スサノオ、天界で大暴れする

     アマテラスは、本当はスサノオが賭けに勝ったことがわかっていましたので、弟に天界を乗っ取る気がないことを知っていました。そこで、スサノオが天界に入ることを認めました。
     しかし、アマテラスの言う賭けの判定では、スサノオは賭けに負けたことになり、つまり天界を乗っ取る気持ちがあったということになるので、天の神々はみな心配しました。
     実は、この時にアマテラスは正直に、「本当は弟の勝ちだったのよ」と言っておけばよかったのです。しかし、やっぱり自分の勝ちとしたほうが気分がよかったので黙っていたのです。ところが、これが原因で後々とんでもないことになろうとは、神様であるアマテラスにもこの時はわからなかったのです。 
     賭けの判定で、天界を乗っ取る気があったということになってしまったスサノオに対して、天の神々はどう接していいかわかりません。
     一方、スサノオはというと、もともと心にやましいところはありませんでしたので、何の気がねもせず普通に天界の神々に接していました。
    「やあ、元気かい?」
    「ええ、その、えへへ・・・・・・」
     スサノオのあいさつに天の神々は愛想笑いを返してはいますが、さっさと逃げるように行ってしまします。
    「何だ? こいつら」
     こんな感じで、スサノオはひとりぼっちでいることが多くなりました。

     スサノオはさびしさをまぎらわすために、大酒を飲み、荒馬に乗って天界を駆け回りました。そして、天の田や畑を踏み荒らし、あぜを壊してしまいました。また、ベロベロに酔っ払って天の神殿をトイレと間違えて、そこでウンコをしてしまうという大失態もやらかしてしまいました。
    「アマテラス様、何とかしてください」
    「やっぱり、スサノオ様は天界をめちゃくちゃにするために来たんですよ」
     アマテラスのところに天の神々が次々と苦情を言ってきます。
     アマテラス自身もまずいなあと思っていたのです。スサノオが暴れるようになったのも、もとはといえばアマテラスがついたウソで、弟が仲間はずれにされていたことが原因だったからです。
    「私が賭けに負けたのに、勝ったなんてウソを言うんじゃなかった」
     そう思うと弟を攻めるわけにもいきません。
    「スサノオはちょっと悪酔いしただけよ。酔いがさめればやめるわよ」
     と神々には説明してスサノオをかばっていました。しかし、実は賭けは自分の負けだったとは今さら言えません。もし、ウソだと知られたらみなは自分のことをどう思うだろう。そう考えると怖くて正直に言うことはできなかったのです。

     しかし、とうとうスサノオは取り返しのつかないことをしでかしてしまいました。それはこういうことです。
     アマテラスは天の機織り(はたおり)の御殿をつくり、天之御衣織女(アメノミゾオリメ)という女神たちに機織り仕事をさせていました。そこはとても神聖な場所であり、まじめな女神たちがいつでも行儀正しく仕事をしているのです。
    「いつもおしとやかにしている女神たちが、びっくりして大騒ぎするところを一度見てみたいものだ」
     スサノオはいたずらをしようと考えました。姉のアマテラスがどんなに自分が悪さをしても叱らないので図にのっていたのです。
     スサノオは機織り御殿の天井に穴を開けて、そこから雨の天斑馬(フチコマ)という天に住むまだら色の馬の皮を投げ入れたのです。突然頭の上から馬が降ってきたので、御殿の中は大騒ぎになりました。女神たちはあわてて逃げ出そうとして、機織り機に蹴つまづいたり、ひっくりかえったりもう散々です。そして、とんでもないことに、女神のひとりが、おしりに機織り器具が突き刺さって死んでしまったのです。

     スサノオは、天の神々に取り押さえられて天の牢屋に入れられました。本当なら暴れて逃げることもできるほどの力があるスサノオですが、ことの重大さにショックを受けて反抗する力も出ず、静かにしていました。
    「スサノオ様をゆるすことはできない」
    「追放だ」
    「死刑にしろ」
     天の神々の怒りは、それはすごいものでした。
    「これというのも、姉神のアマテラス様が弟のスサノオ様を甘やかすからだ」
    「しかし、今度はアマテラス様も黙ってはおるまい。スサノオ様に厳罰を与えてくれるだろう」
    「そうだ、きっとそうだ!」
     天の神々は、アマテラスがスサノオにどんな罰を与えるか注目しているのです。
      アマテラス、いなくなる 

    「たしかに、スサノオは悪いことをしました。しかし、それは私のついたウソが原因でみなから仲間はずれにされたさびしさから起こしたことなのよ」
     アマテラスは後悔していました。
    「ウソをついた私が、スサノオを罰することなんかできない!」
     しかし、アマテラスがスサノオに厳罰を下さないかぎり、天の神々は納得しそうにありません。
    「では、賭けは本当は私が負けだったことを、みなに説明して弟をゆるしてもらおうか?」
     そんなことしたら、今度は自分が責められるだろうと思うと怖くて、それもできそうにありません。
    「いったい、どうすればいいの・・・・・・」
     アマテラスの頭は空っぽになって、何も考えられなくなってしまいました。

     しばらくたったある日、みな十分に眠ったというのに明るくなりません。
    「まだ夜なのかな? もう一回寝るか」と言ってまた布団に入りました。
     しばらく眠った後、目を覚ましましたが、まだ外は暗いままなのです。
    「いくら何でも変だぞ」
     神々は家から出てきました。
    「何で、暗いままなんでしょうな」
    「不思議です。私なんかもう二度も布団に入って寝直したのです」
    「私は三回です。おかげで全然眠くありません。もうとっくに明るくなってもよいころだと思うんですがね」
     すると、高天原の宮殿に使えている神が大騒ぎしながらこちらに走ってきます。
    「たっ、大変だ〜!アマテラス様がいないんだ」
    「何だって〜!?」
    「どこに行ったんだ?」
    「こっちが知りたいよ!」
    「どうなるんだ?」
    「この世の中はずっと暗いままだ」
    「え〜!」
     これは一大事と神々は心当たりを探しましたが、アマテラスはどこにもいません。アマテラスはいったいどこに行ってしまったのでしょう。


      天の岩戸

    「岩屋の入り口の岩戸が閉まっているぞ」
     天界には岩でできた家がありましたが、気がつくとその家の入口の大きな岩の戸が閉まっていました。
     入り口をふさぐ岩戸はとても重く、またぴったりと隙間なく閉まっていて、手をかけるところもないため、どんな力持ちであっても外から開けることはできません。そして、中もまったく見えません。
    「まさか、この中にアマテラス様は入ってしまったのではないだろうな」
    「おい、だれか中に声をかけてみろよ」
    「相手を怖がらせないように、やさしく声をかけるんだよ」
    「ウズメ! あんたはきれいでやさしい声をしているから、あんたが声をかけなさいよ」
     ウズメ(天宇受売命:アメノウズメノミコト)は、歌と踊りが上手な女神で、彼女がいるとその場が明るく楽しく雰囲気になるので、みなから好かれています。このような時こそ、彼女が適任とみな考えました。
    「岩屋の中にだれかいるの?」
     すると中から消え入りそうな小さな声で、「はい」という返事が聞こえます。
    「アマテラス様ではなくって?」
    「そうです」
    「元気がありませんね。お加減が悪いのですか?」
     ウズメはやさしく声をかけるのですが、もうそれにはアマテラスは答えません。
    「私が悪かったの・・・・・・私が・・・・・・」と、独り言を言っているようです。
     そして、とうとう部屋の奥に行ってしまったものか、布団をかぶってしまったのか、中から何の声も音もしなくなってしまったのです。

     ウズメからの報告を受けた神々には、アマテラスが閉じこもってしまった理由がわかりませんでした。
    「アマテラス様は『ご自分が悪かった』って言ってましたわ」
    「何が悪かったんだろう?」
    「何だろうねぇ。悪いことなんてないよねぇ」
     口々に原因となりそうなことをみなで思いだそうとしましたが、はっきりしません。しかし、どうもスサノオが起こした事件と関係がありそうだというのが、みなの共通の意見でした。


      八百万の神々、作戦会議を開く

     アマテラスが岩屋にこもってしまってから、もういく日過ぎたのでしょう。あるものは20日といい、あるものは30日と言います。しかし、朝が来ないので何日たったか数え用もなく、実のところ正確な日数はだれにもわからないのです。
     とにかく、それからずっと、天界だけでなく下界も真っ暗闇なってしまっているのです。
     草や木は枯れてしまいました。変な虫がたくさん出てきて作物を荒らしてしまいました。風邪などの病気が流行り始めました。泥棒など悪いことをするものも現われ始めました。
    「これは、大変なことになったものだ」
    「このままでは、天界も下界もすべて滅亡してしまうぞ」
    「みなで知恵を出しあうのだ。何としてでも、アマテラス様に機嫌を直していただき、外に出てきてもらうのだ」
     天の安の河の河原に全世界から八百万の神々が集結し、世界最初の会議が開かれました。
     議長にはオモイカネ(思金神:オモイカネノカミ)が選ばれました。ずば抜けて考えの深い神様だったからです。
    「とにかく、アマテラス様が中から岩戸を少しでも開けてくれたら、力持ちの神が隙間に指をかけて、無理矢理にでも開くことができるのだが」
    「まず、ニワトリ(常世の長鳴き鶏)だな」
     とだれかが言いました。
    「えっ?」
    「だって、ほら、ニワトリが鳴くと明るくなるじゃない?」
    「そうか!アマテラス様が出てくるかもな」
    「そうなのかな、明るくなるからニワトリが鳴くんじゃないの?」
    「そうかもしれない。でもやってみる価値はあるな、きっと」
    「みなで岩屋の外で楽しく笑ったらどう?」
    「何で?」
    「だって、みなが楽しそうにしていれば仲間に入りたいと思うでしょ」
    「でもなぁ。笑うったって、暗いし、寒いし、こんな状態で笑えるかねぇ」
    「ウズメに歌って、踊ってもらいましょうよ。歌ってたり、踊ったりすると心の中が明るく、楽しくなるじゃない」
    「そうだ、そうだ、それはいい」
     と、みなが言っていると、議長のオモイカネは不安げに言いました。
    「それだけでうまくいくだろうか。何かもう一つ決め手がほしいな」
    「大きくてゆがみのない鏡をつくりましょう」
     と、イシコリドメ(伊斯許理度売命:イシコリドメノミコト)が言いました。
    「いいですか? アマテラス様が外のお祭りが気になって、ちょっとでも岩戸を開けて外を見たとします」
    「ふむふむ」
    「そこに、大きくてゆがみのない鏡をおいておいて、アマテラス様の姿を写しだします。アマテラス様は鏡に映ったご自分の姿を見て、その立派な神様は誰だろうと、身を乗りだしてもっとよく見ようとするのでは」
    「そうか! その隙に岩戸に手をかけてこじ開けてしまえばいいんだ」
    「おぉ〜」
    「なら、鏡のまわりを宝玉の首飾りで飾りましょう。鏡に映った姿がいっそうすてきに見えるようにね」
     とタマノオヤ(玉祖命:タマノオヤノミコト)が提案しました。
     ここまでやれば、うまくいくかもしれない。ということで、さっそく占いしてみることにしました。コヤネ(天児屋根命:アメノコヤネノミコト)とフトタマ(布刀玉命:フトタマノミコト)のふたりが占ってみると「みんなで頑張れば大丈夫」という結果が出ました。

     さあ、準備開始です。
     .縫錺肇蠅鬚燭さん集める(特に鳴き声が大きく、長く泣けるやつ)。
     ▲Ε坤瓩歌って踊るための舞台をつくる。
     6世鬚弔る(大きくて、ゆがみがなく、ピカピカのもの)。
     な玉の首飾りをつくる(宝玉はかわいい『まが玉』とし、数は五百とする)。
     ズ隋覆気き)の木を採ってくる(香具山に生えているものにかぎる)。
     榊の樹の枝に鏡をセットして、そのまわりを宝玉の首飾り、それを岩との前に置く(この作業は中のアマテラス様に絶対に気づかれないように注意して行うこと)。


      女神の裸踊り

     みんな必死に、というよりお祭りの準備だということで、楽しく働いていましたので、大変な仕事のわりには意外と早く準備が完了しました。

     神々が岩屋の前に集まってきました。かがり火があたりを明るく照らしました。みなお祭りが始まるのを今か今かと待っているのです。
     まず、お祭りの開始の儀式です。フトタマが立派な榊をお供えします。コヤネが祝詞(のりと)を読み上げて、アマテラスが再び姿を現してくれるようお祈りをします。
     そして、岩屋の岩戸のそばには中のアマテラスに気づかれないように、そっとタジカラオ(天手力男神:アメノタジカラオノカミ)が配置につきました。タヂカラオは相撲の神様で天界一の力持ちです。ちょっとでも岩戸が開けば、隙間に手を突っ込んでこじ開けてしまうでしょう。

     ニワトリにかがり火を近づけて、朝が来たと勘違いさせて一斉に鳴かせました。
     それを合図に神々の輪の中から笛や太鼓が鳴り始めました。いよいよ、世界初のステージショーが開催されるのです。
     天界一の歌上手、踊り上手のウズメが舞台に進みでます。ウズメはアマテラスの次に美しい女神でしたので、彼女の登場とともに会場はどよめきます。
     笛や太鼓に合わせて、きれいで澄んだ声で歌いながら踊ります。舞台は実は大きな桶(空桶:からおけ)なので、彼女がテンポよくステップすると「トン、トトン」と小気味よい音がします。聞いている方はまるでウズメ自身も楽器になっているような錯覚を覚えます。
     あまりの美しさすばらしさに、会場は大歓声に包まれました。するとさらに、演奏も激しく、踊りも華麗になっていくのです。
     ところが、だんだんまずいことになってきました。ウズメはあまりに激しく踊っていたために、帯がほどけて着物がずり落ちてきてしまったのです。
    「わっ! 大変なことになっちゃった」とウズメは思いましたが、ここで自分が踊りをやめて、この作品が失敗したらいけません。必死で笑顔を崩さず踊り続けていました。
     そうこうしているうちに、見ていた神々も気がつき始めていました。
    「ねぇ。ウズメの・・・・・・胸、見えてるんじゃない?」
    「うわぁぁ。胸どころかお尻まで見えてるじゃん」
    「わ〜い」
    「キャー」
     会場は大騒ぎになってしまいました。


      作戦成功、アマテラス現れる

    「いったい、どうしたこと?」
     外ではニワトリは鳴くし、笛や太鼓の演奏や歌が聞こえてきます。しかもみな楽しそうにはしゃいでいる様子です。
    「何があるのかしら」と、アマテラスもだんだんと気になってきました。
    「ちょっとだけのぞいてみようかしら」
     岩戸が少し開いて一条の光の筋が現れました。しかし、まだタジカラオの指が入るほどの隙間はありません。

    「ウズメ・・・・・・ウズメ・・・・・・」と、アマテラスはウズメを呼びました。ウズメは恥ずかしそうに着物を直しながら岩戸まで走っていきました。
    「ウズメ。みな、楽しそうにしているけど。何かよいことがあったの?」
    「はい。とてもすばらしい神様が現れましたので、みなで喜びあっているのです」
     アマテラスが不思議そうな顔をしているので、ウズメはさらに言いました。
    「ほら、その方はここにおられます」
     するとすかさずコヤネとフトタマのふたりが、鏡と首飾りがついた榊の枝を差しだしました。
     鏡にアマテラスが映しだされました。あまりの輝きにおどろいて、アマテラスはそれが自分の姿だと気づきません。もっとよく見ようと岩戸をちょっとだけよけいに開いた瞬間です。岩戸の脇に隠れていたタジカラオが、岩戸の隙間に手をかけてこじ開け、アマテラスの手を引いて一気に外に出しました。
     そして間髪をいれずにフトタマが岩戸にしめ縄を張って、二度と岩屋の中にアマテラスが入れないようにしました。

     完璧な神々の連携プレイに、作戦は大成功です。
     アマテラスが現れたことで、世界は再び明るくなりました。
    「万歳、ばんざーい」八百万の神々だけでなく、世界中の生き物たちが喜び抱きあいました。
    「よかったね、よかったね」と、みなが言いあっている中で、アマテラスはぽかんとしていました。そしてハッとしたように言いました。
    「ところで、そのすばらしい神様はどこにいるの?」
     するとコヤネとフトタマが鏡と首飾りがついた榊を差し上げ、その鏡に映ったアマテラスを指さすと、八百万の神々が声をそろえて言いました。
    「それは、この方でございます!」


       (つづく)
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